『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂 幸太郎著 -現在と過去の交差する先に-

やはり伊坂幸太郎はすごい。

そう思わざるおえない、そんなストーリー展開だ。

本書は過去と現在のエピソードが交互に展開される。序盤は、過去と現在とのストーリーの関連性が分からないが、話が進むに連れてその距離感が近づく。そして意外な結末を迎える。。。

 

主人公は何の変哲もない学生と、フリーター(?)。舞台も何の変哲もない日常だ。

ただし、そんな日常に加わる非日常。そんな非日常が、普段何気なく生活して、刺激を求めている読者にとって、引き込まれるスパイスとなっている。

 

登場人物は、大学生の椎名、フリーター?の河崎、ペットショップ店員の琴美、大学院生でブータン出身のドルジ。舞台は現在と過去を行き来するなかで、登場人物のそれぞれの視点でストーリーが語られていく。序盤は関連性が分からず、なおかつ、椎名が河崎に一緒に本屋を襲うことを持ちかけられることから始まる。そして過去に語られる、とある事件をきっかけに現在と過去との距離が近づいていくことになる。

  

 "僕はモデルガンを握って、書店を見張っていた。夜のせいか、頭が混乱しているせいか、罪の意識はない。強いて言えば、親への後ろめたさはあった。"

冒頭の出だしから、頭の中でクエッションマークがいくつも点灯する。伊坂幸太郎の面白さはここにある。非常に掴みがうまいのだ。

 

伊坂幸太郎さんといえば、本好きの人で知らない人はいないと言えるほどの人気作家だ。その他の代表作といえば、『重力ピエロ』、『ゴールデンスランバー』など大変おもしろい作品を多数手がけている。

 

初めて読んだ伊坂さんの作品は『重力ピエロ』だった。伊坂さんの作品は王道というより、覇道だと思っている。人間のダークサイドな側面を上手く織り混ぜることで、ストーリー全体にいいテンポを生んでいる。本作も出だしのつかみから、人間の裏の部分を上手く表現され、後半に進むほどストーリーに引き込まれていく。

読み進めれば、進むほど先が気になってページを捲る手が止まらなくなる、そんな時間を提供してくれること間違いなしだ。